定義・算出方法と2025年最新の動向・今後の予測
少子高齢化に伴う労働力不足は、多くの業界にとって深刻な課題となっています。
優秀な人材獲得を目指す採用担当者にとって「有効求人倍率」は、日本国内の労働市場の現状を把握するために欠かせない指標です。
有効求人倍率を確認すれば、自社が採用したい人材が獲得しやすいのか、獲得しにくいのかを判断しやすくなります。
そこで本記事では、有効求人倍率の基本的な意味に加え、最新動向や職種別の状況、今後の見通しについて解説します。有効求人倍率の算出方法や見方のポイントも紹介しているので、ぜひ本記事を人材確保の基礎知識として役立ててください。
1. 有効求人倍率とは?定義・算出方法
企業側にとって有効求人倍率とは、求める人材が獲得しやすいかどうかを確認できるひとつの指標です。
厚生労働省が公表しているもののため、日本の雇用状況を把握する信頼できるデータでもあります。
ただし、有効求人倍率がどのようなデータをもとに算出されているかを理解していないと、実際の雇用状況との乖離を正しく認識できなくなるため、注意が必要です。
ここでは、有効求人倍率の定義や算出方法、見方の注意点を紹介します。
(1) 有効求人倍率の定義
有効求人倍率とは、求職者1人に対して何件の求人があるかを示す経済指標のことです。数値が高いほど「人手不足」の状態で、低いほど「就職難」の状態を表します。
有効求人倍率は厚生労働省が毎月発表しているデータであり、日本の雇用情勢を把握する上で重要な基本データのひとつです。
例えば、有効求人倍率が1.5倍の場合、求職者1人に対して1.5件の求人がある状態を意味し、求職者より求人のほうが多い「売り手市場」となっています。
逆に0.8倍であれば、求職者1人に対して0.8件の求人しかない状況を示すため「買い手市場」と判断できます。
企業側から見ると、有効求人倍率が高いほうが人材の獲得競争が厳しくなり、低いほうがより多くから優秀な人材を選びやすい状況といえるでしょう。
一方で求職者側から見ると、有効求人倍率が高いほうが採用されやすく、低いほうが「就職氷河期」のような就職難となります。
社会全体から見ると、有効求人倍率の高低はどちらがよく、どちらが悪いとは一概にいえないでしょう。
(2) 有効求人倍率の算出方法
有効求人倍率は、以下の計算式で求められます。
有効求人倍率=有効求人数÷有効求職者数
「有効求人数」とは、ハローワークに登録されている求人のうち、募集が継続中のものの総数です。
また「有効求職者数」とは、ハローワークに求職登録をしている就職活動中の人の総数を指します。
つまり有効求人倍率には、民間の求人サイトや人材紹介会社を通じた求人・求職活動は考慮されていません。
有効求人倍率が対象としているのは、あくまでもハローワーク経由の求人・求職データのみである点に注意が必要です。
有効求人倍率が実際の労働市場の全体像を完全に反映しているわけではないことも、理解しておきましょう。
(3) 有効求人倍率の見方・注意点
有効求人倍率を読み解く際は、以下のポイントに注目するとよいでしょう。
- 倍率の大きさ:1.0倍より高ければ人手不足、低ければ優秀な人材を獲得しやすい傾向である
- 前月比・前年同月比の変化:短期的な変動と長期的なトレンドを把握できる
- 正社員と非正規社員の違い:雇用形態による差異を確認できる
- 地域差:採用予定地域の雇用状況を把握できる
- 産業・職種別の違い:自社の業種・職種の数値から、人手不足の度合いを把握できる
地域や職種の倍率をチェックすれば、自社に必要な人材獲得競争の状況がつかめます。
ただし、有効求人倍率は必ずしも正社員に限った数値ではありません。参考統計表の詳細データから、パートを含むデータ・含まない数値の違いを把握し、自社の採用に適したデータ抽出が必要です。
外国人採用を検討している場合も、有効求人倍率を確認すればどの業種・地域で人材が不足しているか、見極めるのに役立つでしょう。
2. 有効求人倍率の最新データと推移
※出典:一般職業紹介状況(令和7年1月分)について-厚生労働省
上図は、厚生労働省が公表した2025年(令和7年)1月の有効求人倍率の最新データ(右)と、2012年(平成24年)からの推移を示したグラフ(左)です。
2025年1月の有効求人倍率は季節調整値で1.26倍と、2024年の平均とほぼ同率となりました。
直近12年間で最も有効求人倍率が高かったのは、2018年(平成30年)の1.61倍です。直後の2020年に急落しているのは、新型コロナウイルスの流行により求人数が減った影響となっています。
新型コロナウイルスが落ち着きを見せはじめた2024年頃から有効求人倍率は上がり、現在では全国的に人手不足が続いている状況です。
3.【2025年最新】主な職種別の有効求人倍率と今後の予測
厚生労働省が公表した2025年(令和7年)1月のデータによると、主な職種別の有効求人倍率は下表のとおりです。
主な職種 | 有効求人倍率 ※2025年1月(常用(パート含む)) |
情報処理・通信技術者 | 1.58倍 |
建築・土木・測量技術者 | 6.03倍 |
事務従事者 | 0.48倍 |
販売従事者 | 2.16倍 |
介護サービス職業従事者 | 4.08倍 |
接客・給仕職業従事者 | 2.79倍 |
機械整備・修理従事者 | 4.26倍 |
建設躯体工事従事者 | 8.42倍 |
IT分野のエンジニアを含む専門的・技術的職業や、介護、機会整備、建設工事の分野では、人手不足が顕著な状況です。
一方で、一般事務を含む事務職の有効求人倍率は0.48倍となっており、人手は十分に足りていると考えられます。
(1) 今後の予測
下表は同データを前年同月と比較した際の、産業別有効求人倍率の傾向です。
増加した職種 (人手不足増加傾向) | サービス業(他に分類されないもの):5.0%増学術研究・専門・技術サービス業:3.2%増情報通信業:1.6%増 |
減少した職種 (人手不足解消傾向) | 教育・学習支援業:5.3%減生活関連サービス業・娯楽業:5.0%減運輸業・郵便業:3.5%減 |
前年同月よりサービス業や学術研究・専門・技術サービス業、情報通信業の有効求人倍率が増えている状況です。
AIの浸透により、AI技術をより発展させていく職業やAIでは置き換えられない職種において、人手不足がますます深刻化すると予想されます。
サービス業や専門・技術サービス業、情報通信業の人手不足傾向は、前年に引き続き今後も続くと考えてよいでしょう。
4. まとめ
今回は、有効求人倍率の定義や算出方法、厚生労働省が公表した2025年1月の最新データなどを紹介しました。
有効求人倍率は、求人市場の「今」を映し出す重要な指標です。全体の倍率が1.0倍を上回れば企業の人材獲得競争が激しい環境と判断できます。
業種・職種や地域によっても倍率が大きく異なるため、採用担当者は採用したい人材の職種や地域の細かなデータを確認するようにしましょう。
特に情報通信業や専門的・技術的職業のようなAI技術を駆使する職種や、介護やサービス業のようなAIに代替できない職種では、今後も高い有効求人倍率が続くと予想されます。
人材採用を成功させるためには、最新の労働市場データやトレンドを把握し、柔軟に対応する必要があるでしょう。
外国人採用は、日本の人手不足を解消するための有効な施策の一つです。この機会に外国人の採用も検討してみてはいかがでしょうか。